皆さんこんにちは。カウンセリングを行なっている臨床心理士の菜月じゅんです。
今回は、臨床心理士指定大学院の受験の流れと試験対策についてのお話をしていこうと思います。
【受験の概要】
まず、受験の概要についてです。
臨床心理士指定大学院は全国に約150校あります。
そして、それぞれの大学院で入学試験が年に1回から2回あります。
秋入試と春入試です。
8月〜9月ぐらいに秋入試があり、1月〜2月ぐらいに春入試があります。
試験内容は大学院ごとに異なりますが、だいたい心理学と統計学の記述試験、英文和訳試験、面接試験は行なわれます。
また、出題範囲も大学院ごとに異なります。
社会心理学からの出題が多い大学院とか、不登校に関する出題が多い大学院など様々あります。
また、入学願書を出す際には、研究計画書を出す必要があります。
研究計画書というのは、大学院に入学してから行なう予定の研究についての概要を書いたものです。
概要と言えど、研究の「問題」と「目的」、「方法」まで書かないといけない為、本格的な先行研究と研究見通しが入学前からすでに求められています。
試験の合格倍率はだいたい数倍から10倍程度となっており、どの大学院も激戦となっています。
【受験のスケジュール】
受験のスケジュールについて見ていきましょう。
試験勉強の期間としては、半年から1年間は見積もりたいところです。
今回は4月スタートの場合で考えてみましょう。
まず4月から7月の間に、心理学と統計学と英語の勉強をする必要があります。
そして並行して志望校決めと、研究計画書作成を行なっていきます。
8月、9月あたりの秋入試を受ける為、願書と研究計画書を提出し、試験を受けます。
10月から12月あたりも引き続き、勉強や研究計画書のブラッシュアップをしていきます。
また、1月、2月ぐらいにある春入試を受ける為に、願書と研究計画書を提出し、試験を受けます。
合格した大学院の中から志望度の高い大学院を選び、入学します。
それでは、次からは試験内容について個別に見ていきましょう。
【心理学と統計学の記述試験】
まず、心理学と統計学の記述試験です。
これは、たとえば「オペラント条件づけ」について200字以内で記述せよ、という問題です。
心理学だけでなく、統計学の範囲からも出題されますので、たとえば「標準偏差」について200字以内で記述せよ、という問題も出てきたりします。
字数は200字前後の出題が多いですが、他にも400字、600字、800字以上などばらつきがあります。
その為、200字前後の記述と、800字以上の記述と両方できるようになっておくことが望ましいです。
200字だけの出題の場合、だいたい1回の試験で10問ぐらい出題されます。
それを60分から120分ほどで記述していきます。
回答は試験時間ギリギリまで行なう場合も多いと思います。
また、出題は、大カテゴリーではなく、中カテゴリーレベルや小カテゴリーレベルの専門用語の出題が多いように感じます。
たとえば、大カテゴリーレベルの「学習心理学」について記述せよ、という問題は出題されず、中カテゴリーレベルの「オペラント条件づけ」について記述せよ、という問題が出題されたり、小カテゴリーレベルの「強化スケジュール」について記述せよ、という問題が出題されるということです。
つまり、勉強する際には、中カテゴリーレベルの専門用語についてノートの1ページの中で整理し、小カテゴリーレベルの専門用語を200字の分量で暗記し、まとめとして中カテゴリーレベルの専門用語も200字で暗記しておけば色々な出題に対応できそうです。
また、試験ではマークシート問題は出ません。
その為、心理学と統計学の知識をしっかり暗記している必要があり、難易度の高い試験形式となっています。
出題テーマを大きいカテゴリーで分けていくと、「基礎心理学」「臨床心理学」「統計学・研究法」などがあります。
さらに、「基礎心理学」はたとえば「心理学の歴史」「認知心理学」「学習心理学」「発達心理学」「社会心理学」などの分野があります。
「臨床心理学」は、たとえば「精神疾患」「心理検査」「心理療法」などの分野があります。
統計学や研究法は、初心者は理解に苦労しやすく、受験生の苦手分野になっていることが多いように思います。
【研究計画書】
次は、研究計画書についてです。
研究計画書は願書提出の際に必要になる為、早めに暫定の完成をさせたいところです。
しかし、研究計画書を書く前提として、統計学と研究法の知識が必要になります。
その為、統計学と研究法を先に勉強しなくてはいけないということを覚えておきましょう。
また、研究計画書は妄想で書けるものではない為、自分が興味のある分野の過去の論文を、論文検索サイトのciniiなどで読み漁っていき、その分野の研究状況がどうなっているかを把握します。
色々な論文を読んでいくと、まだ研究されていないけど今後研究が進むと良さそうなテーマが見つかってきます。
それを研究計画書のテーマに選ぶといいかもしれません。
研究計画書はだいたいA4一枚か二枚ぐらいで作成することになると思います。
研究計画書には、「問題」「目的」と「方法」について明記する必要があります。
そのようにして作成した研究計画書は大学院入学後のゼミ選びや研究テーマに大きく関わってくる為、テキトーなテーマで書くと入学後に悲惨なことになり兼ねないので、テーマは真剣に選びましょう。
また、研究テーマが決まったら、それに伴って受けるべき志望校が自然と絞られてきます。
なぜなら、大学院ごとに院生が研究可能なテーマが決まっているからです。
というのは、その大学にいる教授の専門分野と近い研究テーマじゃないと指導してもらえない為です。
たとえば、認知行動療法について研究したいのであれば、認知行動療法を専門とした教授のいる大学院に進学しないと、認知行動療法の研究はできないということです。
このように、研究計画書で研究テーマが決まってくると自然と進学するべき大学院は絞られてくると思います。
【英文和訳試験】
次は、英文和訳試験についてです。
A3用紙に書かれた心理学に関する英語長文が提示され、その英文の全訳を行なうという問題です。
英語長文の全訳です。
ハードルが高いと感じる人も多いんじゃないでしょうか。
しかし、英和辞典を持ち込める試験が多いのが救いでしょうか。
英語レベルは英検2級レベルです。
マークシート問題は基本的に存在しません。
試験時間はだいたい60分から120分です。
英語長文の全訳問題ですが、実際すべて和訳できる人はほぼ存在しません。
むしろ全訳できない時間配分を意図的に組まれています。
全文のうち半分ぐらいの和訳し、意味と構文がだいたい正しければ、合格できます。
試験での評価ポイントは、単語の意味が合っているかどうかと、構文が正しいかどうかです。
単語の意味に関しては、基本的な英単語の暗記に加え、心理学の専門用語を英単語で覚えることが重要です。
また、わからない英単語は試験中に速やかに辞書で調べて書きましょう。
意外にも、辞書を引くスピードが試験の得点に直結してきます。
また、構文が間違っていると、その一文が丸々失点につながります。
構文はしっかり取るようにしましょう。
試験はかなり時間との戦いになる為、受験期間に英文和訳の訓練を日々積み重ねることが試験突破において非常に重要です。
【面接試験】
次は、面接試験についてです。
心理学と統計学の記述試験、そして英文和訳がだいたい1次試験として行なわれ、その後の2次試験として面接が行なわれます。
面接試験は、面接官を担当する教授複数人との質疑応答です。
面接で聞かれることは、大学院進学の志望動機や臨床心理士になる志望動機、予定している研究テーマを選んだ理由やどのように研究を進めていくつもりか、といったことなどは聞かれやすいと思います。
それに加え、個人のパーソナリティがわかるような質問もあると思います。
たとえば、長所、短所、趣味などです。
面接時間は大体10分から30分ぐらいだと思います。
面接試験での評価ポイントはおそらく、「ビジョンの明確さ」や「コミュニケーション力」や「人柄」だと思います。
また、いわゆる面接ではなく、グループディスカッション形式の面接試験の場合もあります。
グループディスカッション形式の場合、臨床心理学に関するあるテーマや事例が提示され、それについて受験者数人がディスカッションを行なうという試験になります。
試験時間は30分から60分ぐらいだと思います。
ディスカッションではおそらく、入学後に学生として迎え入れたときに、自分たち教授陣が面倒を見ていけそうかどうかの「コミュニケーション力」や「人柄」を評価しているのだと思われます。
【まとめ】
以上のように、臨床心理士指定大学院の試験は、秋と春の時期に行なわれ、受験にあたり、研究計画書を作成し、志望校を決め、心理学と統計学と英語の勉強をし、面接対策を行なっていくことが必要であるということでした。
レベルの高い試験なので合格は大変ですが、それでも臨床心理士になりたい人はこのイバラの道を切り抜けて下さい。
頑張って下さい。応援しています。
今回は、臨床心理士指定大学院の受験の流れと試験対策についてのお話をしました。
次回もまた皆さんに役立つお話をしようと思っていますので、楽しみにしていてください。
それでは、カウンセリングを行なっている臨床心理士の菜月じゅんでした。